中国・深セン市で、日本人学校に通う10歳の男子児童が登校中に刃物を持った男に襲われた事件です。19日、男子児童の死亡が発表されました。  この事件を受けて、中国に家族を連れて駐在している従業員に一時帰国を認める企業も出てきています。 ■中国人も献花「坊やごめんね」 深セン日本人学校 塚本昌夫校長 「兄弟思いで、動物が好きで、命を大切にする…お子さん。とてもドッジボールが大好きな子、活発な子、元気な子」  登校中の10歳の児童が襲われ死亡するというショッキングな事件。現場には亡くなった男児を悼み、花束を手向ける市民が次々と訪れていました。  一緒に添えられたカードには「坊やごめんね」「天国には暴力がないことを」などのメッセージがありました。  一方で、手向けられた花束を警備員が金属探知機のようなもので検査し、回収していく様子も。 献花に訪れた女性 「私も子どもを持つ1人の母親なので、自分の子どもが亡くなったのと同じぐらいの気持ちです」 献花に訪れた男性 「日本のみなさんに、すべての中国人はこうじゃないと分かってほしいと思います」  現場では、何が起こっていたのでしょうか? 事件を目撃した女性 「ここです。私が来たときは、警察と救急車はすでにここに来ていました。だんだん人が集まってきて、武装警察も来ました」  登校中の親子が日本人学校の校門からおよそ200メートルの場所に差し掛かった、その時、男児が44歳の男に腹部を刺されました。  男児を刃物で刺した男は駆け付けた当局に身柄を確保されましたが、犯行に及んだ背景や動機についてはいまだ発表がありません。 金杉憲治 駐中国大使 「容疑者は前科がある人間で、あくまでも個別の事案だと説明がありました。一番知りたいのは日本人が狙われていたのか、さらには日本人学校が狙われていたのか、そこを知りたい」  事件を目撃した中国人女性によると、男が取り押さえられるなか、男児は点滴をつけてすぐに救急車で運ばれたといいます。  19日未明まで手術が続けられていましたが、病院で死亡が確認されました。亡くなった男児は日本国籍で、父親が日本人、母親が中国人でした。 岸田文雄総理大臣 「このような事案、二度と繰り返してはなりません。日本人の安全確保と再発防止、中国側に強く求めていくと同時に日本政府としてもできることすべて行っていかなければならない」 ■「絶望感じる」約3600人の日本人が住む町で…  中国の改革開放政策により、最も開かれた都市と言われた深セン市。外国人も多く住んでいますが、この都市で起きた事件に、日本人の間で衝撃が広がっています。  今回事件が起きた「深セン」は、北京や上海、広州とならぶ中国4大都市の1つ。香港の対岸に位置し、40年ほど前までは小さな漁村でしたが、中国初の経済特区に指定され、急速に発展。人口は1779万人、およそ3600人の日本人が暮らしています。  通信機器大手のファーウェイや電気自動車を展開するBYD、ドローン大手のDJIが本社を置き、多くのIT関連企業が集まることから「中国のシリコンバレー」と呼ばれています。  男児が通う日本人学校には、日本国籍を持つ小中学生およそ270人が在籍しています。事件について深センに住む日本人は、次のように話します。 深セン在住の日本人 「けっこう絶望を感じましたね。最も中国の中で平和と言われていて、自分もそう思い続けてきたんですけど、まさか日本人をターゲットにして、しかも死に至るまでの事件を起こすっていうのは想像できなかったので、衝撃ですね。昔から深センで仲が良い人たちとのグループでは、子育てをするときにこのままだと怖いと。だったら日本に移住して子育てしたほうが良いんじゃないかという声は、実際に上がっていますね」  衝撃を受けているのは、日本人だけではありません。 現場近くの住民(中国人) 「すごく恐ろしいと思いました。孫と外へ出かけるときは、孫から一歩も離れられません。このような事件に触れるたびに怖くて、今の社会はどうなったのか恐ろしく感じます」 ■寄せられる哀悼「心が痛い」  今回の事件について、北京の在中国日本大使館は、中国のSNS、ウェイボーに哀悼の意を投稿。 在中国日本大使館 「深センの日本人学校の児童が学校に行く途中で襲撃され、けがをし、19日未明に亡くなりました。これに対し大使館は大変心を痛め、遺憾に思い、心より哀悼の意を表します」  この投稿に対して中国では、SNSに男児の死を悼むコメントが多く寄せられました。 中国語で寄せられたコメント 「心が痛い。同じ悲劇が再発しませんように」 「坊や、無事に天国へ。中国があなたに申し訳ないことをした」 「子どもに対して、いかなる暴力行為もすべてテロだ」  しかし一部では、日本への不満をぶつけるような書き込みもありました。 中国語で寄せられたコメント 「過去に罰当たりなことをいっぱいやっているから、今はその報いを受けているのだ」 「何なの?中国の土地に日本人学校があるなんて」  事件の背景に反日感情があったかどうかは不明ですが、中国では今年に入って日本人が被害に遭う事件が相次いでいます。 ■相次ぐ襲撃…6月には蘇州でも  今年6月、上海の隣・蘇州市でも、スクールバスを待っていた日本人の親子が男に切り付けられる事件がありました。  騒然とした雰囲気の中、オレンジのベストを着て倒れていたのは、バスの案内係をしていた中国人女性です。 事件を目撃した人 「けが人はあそこにいた。自分が来た時は、搬送されている最中だった」  日本人の親子は負傷したものの命に別状はありませんでしたが、男を止めようとした中国人女性は刃物で数カ所刺され、その後亡くなりました。 小学生の子を持つ日本人 「子どもを守ろうとしてくれたのでしょうけど。お気の毒というか、いたたまれない」  外国人が襲われた事件は、この2週間前にもありました。吉林省の公園で、アメリカの大学から派遣された教員ら5人が男に刃物で刺されました。  これらの事件を受けて当時、中国政府は次のように述べました。 中国外務省 毛寧副報道局長 「事件が起きたことは、とても遺憾に思います。中国にいる外国人の安全を確保するため、しかるべき措置をとります。これは偶発的な事件であり、中国は世界が認める最も安全な国の1つです」  蘇州の事件に関して中国当局は、現在も捜査を進めているとしていますが、襲った男の動機などは明らかにされていません。 ■反日感情高まる「国恥の日」  今回、深センで日本人男児が襲われたのは「9月18日」。この日付が事件に関係があるかもしれません。  93年前の9月18日、満州事変のきっかけとなった「柳条湖事件」が起きました。1931年、旧日本軍が南満州鉄道の線路を爆破し、これを中国軍のしわざだと軍事行動を起こし、中国東北部を占領。満州国の建国につながりました。  そのため中国では9月18日は「国恥の日」とされていて、「柳条湖事件」の起きた瀋陽の歴史博物館の外壁には「9月18日」の文字が大きく刻まれています。  中国で反日感情が高まりやすくなる、9月18日。2010年には、北京の日本大使館前で尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件への抗議活動が行われました。 ■9月18日…過去には各地で反日デモ  2年後の2012年にも、瀋陽では多くの人がデモを行い、日本領事館には石が投げ入れられ窓が割られました。壁も、ペンキだらけになっていました。  日本の店などもターゲットにされました。  北京の日本大使館では、大量のペットボトルが投げ込まれました。  日本が尖閣諸島を国有化したことに対する抗議を理由に、こうしたデモが中国全土で広がりました。 ■遺族に哀悼の意を示すも…  登校中の日本人男児が襲われたショッキングな事件。中国の外務省は、次のように話します。 中国外務省 林剣報道官 「中国は、このような不幸な事件が起きたことを遺憾に思います。男児がなくなったことで、哀悼の意を表し、ご家族にお見舞いを申し上げます」  遺族に哀悼の意を示しましたが、容疑者の詳細や動機、6月の事件との関連性について聞かれると…。 林剣報道官 「これまで把握した情報から、これは個別な案件で類似の事件はどの国でも起こりえます。我々は日本人を含む各国の人々が観光、勉強、貿易、生活のため中国を訪れることを歓迎しています」  「外国人の安全を保障する」と強調する一方、容疑者については捜査中として、国籍も含め背景や動機については一切明らかにしませんでした。  また19日の中国の国営放送でも、今回の事件については、ほとんど報じられていません。 女性キャスター 「中国は引き続き、パレスチナ問題の解決に力を注ぐことを発表しました」  事件当初の深セン警察の発表文には「日本人」という表現さえもありませんでした。 (「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年9月20日放送分より) [テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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